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厚生労働省が取り纏めた「平成25年度(2013年度)労働時間等総合実態調査結果」は、裁量労働制を検討した労働政策審議会労働条件分科会のおける長時間残業問題の基礎資料であったが、国会論戦でデータが故意に作られていたことが明らかになった。安倍首相は1月29日の衆院予算委員会で「厚労省の調査によれば、裁量労働制で働く人の労働時間の長さは、平均的な人で比べれば一般労働者よりも低いというデータもある。」と答弁したが、2月14日の衆院予算委員会の集中審議で答弁を撤回し謝罪した。厚生労働省が同日に公表した調査データの検証結果によると、裁量労働制の人については実際の労働時間を調査し、一般労働者に関しては「1カ月のうちで残業時間が最も長い1日」を聞き取ったが、調査結果をまとめる段階で「最長」を「平均」の数字として(故意に?)取扱い一般労働者の方が、労働時間が長いというデータを作成した。さらに一般労働者の1日の残業時間が「45時間」など、明らかに不適切なデータが少なくても117件見つかった。又、その後,1日の労働時間が「4時間以下」のデータが120件あることが判明した。「1時間以下のデータ25件も含まれている。このため、厚生労働大臣は23日の記者会見で、全国約1万社から聞き取り調査したデータ役1万件すべてを精査する考えを示した。

2月21日、2018年度予算案採決の前提となる中央公聴会で立憲民主党推薦の参考人の上西充子法政大学教授がねつ造の過程を明らかにして議論に終止符を打った。2015年3月に厚生労働省が民主党に提示した分析では、企画業務型裁量労働制で働く者の1日の労働時間は9時間16分、一般労働者は、9時間37分とされている。2015年7月31日には塩崎厚生労働大臣が衆院厚生労働委員会でこれらの時間をあげて、「一般労働者の方が平均でいくと長い」と答弁した。上西教授は、塩崎厚生労働大臣の答弁の根拠となった2015年3月に厚生労働省が民主党に提示したデータを示し、このデータは厚生労働省の生の調査結果ではないと指摘した。総合実態調査結果では企画業務型裁量労働者の平均的(定義されてはいない)な者においては9時間16分と記載されている(表52)が、一般労働者の平均的な者の労働時間は9時間37分であるがそれについて、総合実態調査では記載がない。総合実態調査は裁量労働者と一般労働者に対して、異なる質問(1カ月のうちで残業時間が最も長い1日)を平均の数字とした。加えて平均の定義なされていないことを指摘し、9時間37分なるデータは、対象事業場の所定労働時間が全て8時間ではないのに8時間+1時間37分と作文している。(7時間30分や7時間45分の事業所が多数存在しているにも拘わらず、)

野党は当然労働政策審議会労働条件分科会での再検討を求めて、働き方改革関連法案から裁量労働制の適用範囲の除外を求めているが安倍首相は「法案を進めたい」と、これを頑なに拒んでいる。安倍晋三ではなく安倍ねつ造と揶揄されるには理由がある。

「平成25年度(2013年度)労働時間等総合実態調査結果」を再度精査しよう。総合実態調査結果は、2013年10月30日の第104回労働政策審議会労働条件分科会に提出され、厚生労働省村山労働条件政策課長が説明しているが、裁量労働制労働者と、一般労働者の労働時間の比較については総合実態調査報告にも記載がなく、説明もされていない。企画業務型裁量労働者の1日の労働時間9時間16分については記載(11ページ)があり、表52でその内容が示されているが、一般労働者の1日の労働時間については記載されていない。報道では9時間37分とされていたが、表52に対応する表XXについては、山井衆議院議員のツイート(1日の法定時間外労働の実績に1時間37分とある表が掲載されている、1時間37分+9時間=9時間37分)の他は、ネット上でも見当たらない。これについての質疑は第104回ではなされていない。

でも2015年7月31日の衆議院厚生労働委員会では塩崎厚生労働大臣が一般労働者の1日の労働時間は9時間37分であると答弁している。労働政策審議会労働条件分科会は142回開催され、2017年9月15日には厚生労働省が示した「働き方改革を推進するための法律案要綱」について、労働政策審議会は、労働条件分科会は「概ね認める。」と報告したが、労働者代表委員から、企画型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度について実施すべきでないとの意見があったことを付記している。労働政策審議会としては他の分科会の報告も添付して答申している。労働条件分科会は104回で総合実態調査報告が提示された後、100回近い分科会を行っているが、労働者の利益を守るべき労働者代表委員は厚生労働省のデータねつ造を明らかに出来ずに、機能不全に陥っていた。

安倍政権は、姑息にも中小企業に対する残業時間の上限規制、大企業に対する同一労働同一賃金(実態はないが)の施行日を2019年4月から2020年4月に延期し、更に裁量労働制の適用範囲の拡大や、高度プロフェッショナル制度の施行日を2019年4月から2020年4月に延期を検討など、火消しを画策しているが、とりわけ裁量労働制の適用範囲拡大は年収要件による歯止めすらなく、多くの労働者に恣意的に適用される可能性が高いため、これを許せば、世界一働きにくい国への道を進むこととなる。労働組合にとって負けることが出来ない闘いになる。