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高度プロフェショナル制度の対象業務として例示された職種としては、①金融商品の開発業務、②金融商品のデイリング業務、③企業・市場等の高度な分析にあたるアナリスト業務、④事業や業務の企画運営にあたるコンサルタント業務、⑤研究開発業務に限定されているかに見える。しかし、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」では、対象となる業務は全く記載されていない。8項の「その他」に「その他所要の規定の整備を行うものとする。」と記載されているだけである。規定の整備とは厚生労働省令を定めるということで、労働基準法が改訂された後、国会での審議なしに対象業務が拡大される危険性が大きい。

専門型裁量労働制も、労働基準法改正時には、①研究開発技術者、②情報処理技術者、③プロデュサー、④ディレクター、⑤デザイナー、が例示されていたが、現在は19業種にまで拡大されている。

労働者派遣法も、もともとは職業安定法によって禁止されていた労働者供給を労働者派遣として例外的に認めるものとされ、対象業務は制定当初は、13業務に限定されていたが26業務に拡大され、現在では、港湾運送業務、建設業務、警備業務、が禁止されている。その他、条件付きで病院・診療所等における医療関連業務も禁止、弁護士、司法書士、土地建物調査士、建築士事務所の管理建築士業務などが禁止されているが、公認会計士などの業務では一部で労働者派遣は可能。

「小さく生んで大きく育てる」は官僚の常套手段。

1、075万円以上との年収基準も危ない。「法律案要綱」では、「基準年間平均給与額の3倍の額を相当上回る水準として厚生労働省令で定める額以上」としているが法律案ではさらに抽象的な言い回しが行われ、厚生労働省令で定めるとなりかねない。

日本経団連は2005年6月21日「ホワイトカラーエグゼンプション」を提案した。

対象業務は、①現行の専門型裁量労働制の対象業務(19業種)従事者で、年収400万円以上か全労働者の平均給与所得以上の者、②労使委員会の決議で定めた業務で、年収400万円以上か全労働者の平均給与所得以上の者、③労使協定で定めた業務で、年収700万円以上か全労働者の給与所得上位20%以上の者、であり、労働時間・休憩・休日・深夜業の規制から除外するという内容。

安倍政権は日本経団連の要請を受け、2006年に発足した第一次政権では、「ホワイトカラーエグゼンプション」導入を盛り込んだ労働基準法改正案を提出しようとしたが、世論の反発が強く、断念。第二次安倍では2015年1月に召集された第189回国会で、年収要件を厳しいものとして、「高度プロフェッショナル制度」を盛り込んだ労働基準法改正案を提出したが、「残業代ゼロ法案」との批判を浴び、反対運動の高まりの中、審議入りしないまま2017年の衆議院解散に伴い廃案となった。

しかし、こうした流れの中で、労働政策審議会は、2015年2月13日付で「今後の労働時間等法制の在り方について(報告)」を取り纏め、厚生労働大臣に建議している。この報告で、①残業時間の上限規制に繋がる「働き過ぎ防止のための法制度の整備」②フレックスタイム制の見直し、③裁量労働制の見直し「企画型裁量労働制の新たな枠組み」(対象業務の拡大)④高度プロフェショナル制度の創設、が建議され、労働政策審議会労働条件分科会で労働者代表の反対もあったが、大筋は維持されたまま、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」が出され、労働政策審議会労働条件分科会は、労働者代表の反対意見に触れながらも「概ね妥当」との報告を行い、他の分科会も「概ね妥当」の報告であり、労働政策審議会はそれらの報告の通りとして2017年9月15日付で答申した。現在は厚生労働省が与党と摺合せ、法律案を取り纏めている。

(蛇足)安倍首相は2018年3月1日の参議院予算委員会で高度プロフェショナル制度の対象者は「会社に対する交渉力が(裁量労働制の対象者と)相当違うと答弁した。会社に対する交渉力を有する社員はごくわずかに生息しているかもしれないが、間違いなく絶滅危惧種である。