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労働政策審議会建議(報告)は、現行法上、各事業所ごとに必要とされる労使委員会決議の本社一括届出を認める等、制度導入の手続きの簡素化を提言している。しかし、裁量労働制の違法な運用が多数行われている現状を正すためには、手続きの簡素化は違法な運用を助長させる恐れがあり、むしろ厳格な運用が必要である。審議会の労働条件分科会で示された資料によれば「最長労働時間が12時間を超える労働者が存在する事業所が45.2%存在する。こうした長時間労働に歯止めをかけることなく、手続きの簡素化をとの主張は非論理的ではなかろうか。

報告は、長時間労働が蔓延している現状への対応策として「所定労働時間相当働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったことは制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要である」旨を指針に規定するとしている。

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)に係る提言では具体的な年収額として1075万円を省令で規定するとしている。しかし、「相応の処遇」を与えるならば、見做し時間を大きく超える長時間労働を課してもよいわけではないし、1075万円なら、過労死、過労自殺もやむをえないというばかりのロジックを許すわけにはゆかない。強制力のない、罰則規定のない指針が遵守されることを想定するとは、あまりにも無責任な提言ではないか。

今、マスメディアでは、裁量労働制に関する報道を見かけることは殆どない。代わりに、安倍政権の労働組合などの主張を逆手にとっての「最低賃金1,000円」「非正規の正社員化」「同一労働同一賃金」のスローガンが垂れ流されている。労働法制改悪を参院選の争点にしない魂胆が明らかである。いずれのスローガンも検討する、審議会を作るというもので、選挙が終わればお蔵入りとなるものばかりである。(続く)