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多店舗展開する飲食業等の店長さんについては、2008年1月28日の「日本マクドナルド割増賃金請求事件」の東京地裁判決が店長は管理監督者ではないとして、割増賃金の支払いを命じています。判決の管理監督者性に関する部分は、以下のとおりです。

・・・・労働基準法が規定するこれら(週40時間1日8時間制)の労働条件は最低基準を定めたものであるから(同法1条2項)、この規制の枠を超えて労働させる場合に同法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であるといえる。

しかるに管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが(同法41条2項)、これは、管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。・・・・

日本マクドナルドは、2008年8月1日付で直営店の店長ら約2,000人の「名ばかり管理職に対して残業代を支給することを決めた。「名ばかり管理職」問題に歯止めがかけられたように見えるが、日本マクドナルドはこれと同時に店長らの役職手当に該当する「職務給」を廃止し、「労務監査室」を新たに設け、労働時間の管理、残業時間対策を強化した。残業はもともと上司による事前の「残業命令」が前提。少ないアルバイトスタッフで店を切り盛りする店長は、同時に人件費管理を命じられている店長にとってアルバイトスタッフの残業代を切り詰め自分の評価をあげるためにはサービス残業の誘惑が付きまとうことになる。

東京地裁判決は日本マクドナルドにおける店長の果たすべき役割を「店舗の運営に関しては会社を代表して店舗従業員の代表者との間で時間外労働等に関する協定を締結する権限を有するほか、店舗従業員の勤務シフトの決定や、努力目標として位置づけられる次年度の損益計画の作成、販売促進活動の実施等について一定の裁量を有し、また、店舗の支出についても一定の事項に関する決裁権限を有している。」としている。

上記した店長の役割と、労働政策審議会建議(報告)の「業の運営に関する事項の実施の管理と、その実施状況の検証結果に基づく事業の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務」との間には大きな違いはないと見るのが妥当だろう。現在の裁量労働制の定義は「事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務」であるが、「事業の運営に関する『事項の実施の管理』と、その実施状況の検証結果に基づく」を付け加えることによって、企業の中枢における企画・立案・調査・分析業務そのものを離れ『実施の管理』を担う労働者を裁量労働制に組み込もうとしている。裁量労働制に組み込まれた店長は時間管理の対象から除外されるのだからサービス残業とは無縁となる。(続く)