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2015年5月12日の東京新聞(夕刊)で、都内の市場情報を提供する会社で「裁量労働制」で勤務していた47歳の男性が過労死として労災認定されたことが遺族側代理人の棗一郎弁護士によって明らかにされた。棗弁護士によると、男性は市場情報提供のため、未明に起床して顧客にレポートを送り、夕方退社する生活だった。2013年3月に倒れ心室細動で亡くなった。遺族側の独自の調査の結果、発症前の1か月の残業が133時間、発症前2~6か月の平均残業時間は108時間と推定された。2014年8月に労災申請され、2015年3月に認定された。

過労死での労災認定は直前1か月の残業が100時間を超えるか、発症前2~6か月の残業が月80時間を超えていたかなどを基準に総合的に判断される。裁量労働制は、業務の遂行手段や時間配分を労働者自らが決定できるとされているが、労働時間の計算を実際の労働時間ではなく、みなし時間によって行うことが認められる制度である。この会社では月の残業は40時間と見做され、40時間を超えた残業に対する支払いはない。男性は決められた時間までに顧客にレポートを送ることが義務付けられており、実質的に裁量の余地はなかった。つまり、このケースについては偽装裁量労働制と言われてもやむを得ない実態であった。

ところで、あなたの身の周りにもこうした手口で残業代を支払われていない人が数多く存在します。多くの会社では管理職には残業代が払われていません。課長に昇格されて喜んだのに給料は減ってしまった、は多くの人が体験しています。残業代ゼロ円がその原因です。労働基準法では管理監督者には、残業代を払わなくてもよいという規定があるが、管理監督者は出退勤を自分で決めることがその理由の一つです。だから、残業代の支払いを受けていない「課長さん」は定時の30分間後に出社してもよいのです。「重役出勤」という言葉がありました。いまや、重役といえども、毎日ゆっくり出勤などは許されない企業が大半でしょう。労働時間の管理、残業代の支払いについても偽装が横行しています。

安倍政権は、限定されていた裁量労働制の対象業務を拡大することを目論んでいます。裁量労働制は、現在でも長時間過重労働の温床になっています。対象業務拡大の一つのパターンは、「課題解決型提案業務」です。顧客のニーズ・課題・抱えている問題を想定し、その解決策を提案していく営業は、あなた自身の仕事ではないでしょうか。「課題解決型提案業務」の定義は明確ではありません。又、その定義は法律で定めることなく、省令や通達で国会の審議を経ることなく、改訂されるもので、今後、店頭販売等の極めて単純な営業業務を除き極めて広範な個別営業が裁量労働の対象業務とされることが懸念される。

(一休み)魚やの店員さんがこのお客はあまり高価な魚を買わないことを知っていて(顧客のニーズを把握して)今、シーズンだから、鮭がうまいよ。塩焼でも、ムニエルでもおいしいよと声をかける(提案する)は、「課題解決型提案業務」にはならないのでしょうか。(続く)