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これまで実例を見ながら裁量労働制の適用範囲が拡大され、多数の労働者が、1日8時間、週40時間という労働時間の国際的なルールの適用除外とされようとしている危険性を述べて来ました。労働基準法は1日8時間、週40時間を超える労働については割増賃金の支払いを命じることで長時間労働の抑制を図ろうとしているのですが、それが十分には機能していないことは、明らかです。過労死、過労自殺の悲劇が雄弁に物語っています。

では労働基準法が長時間労働を抑制出来ない理由はなんでしょうか。

第1には、36協定が機能していないことが挙げられます。ある時期までは36協定は、労働者側、つまり労働組合の武器であると考えられていました。労使交渉で長時間労働の抑制を図るという原則を労働組合が堅持するならば長時間労働の抑制は可能である筈です。36協定を締結せずに1日8時間、週40時間を超える時間外勤務を命じることは労働基準法違反であるからです。       しかし、企業内労働組合が一定の機能を果たしていた時代でも抜け道はありました。管理監督者の拡大解釈です。課長になったら管理監督者であるという拡大解釈は多くの企業内労働組合で容認されて来ました。課長になりたいとの労働者の素朴な希望を利用して、課のサイズを縮小して管理職の数を増加する、課付きの課長という部下のいない、仕事はそれまで通りという名ばかり管理職が出現してきたのです。

裁判では、管理監督者性について明確な基準を示した最高裁判決はありませんが、下級審レベルでは、多くの管理監督者性を判断した判例があります。大阪地裁の医療法人徳洲会事件(昭和60年3月31日判決)や、東京地裁の日本マクドナルド事件(平成28年1月28日判決)が典型例です。

裁量労働制の適用範囲の拡大、「事業の運営に関する『事項の実施の管理』とその実施状況の検証」はこうした管理監督者性の判例と実情の乖離という現状を覆い隠そうとするものです。裁量労働制の範囲の拡大によって徳洲会事件や日本マクドナルド事件に類似する裁判の判決が逆転する可能性があります。裁量労働制は課長職や店長職を労働時間規制の対象外とするものだからです。

この他にも労働基準法が長時間労働を抑制出来ない理由はあります。次回はその点について述べます。(続く)