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労働基準法による長時間労働防止が、実効性がないことの理由の一つに月間、年間の労働時間上限規制が行われていないことが挙げられます。現在は労働時間の上限規制は「限度基準告示」に過ぎません。これを法律に格上げして罰則による強制力を持たせることが必要です。

安倍政権が目論むのは形ばかりの上限規制に過ぎません。時間外労働の限度を、原則として月45時間、年間360時間としていますが、特例として臨時的な特別の事情がある場合労使協定を結べば、年間720時間とする。ただし、2か月、3か月、4か月、5カ月、6か月の平均でいずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内を満たさなければならない、単月では、休日労働を含んで100時間未満とすること、がその骨子です。

2014年6月に過労死等防止対策法が成立しましたが、過去数年を見ると、労災請求件数は高止まりで推移しています。厚生労働省は脳や心臓疾患による過労死の労災認定基準として発症前1カ月間に約100時間、又は、発症2~6か月間に1カ月あたり約80時間を超える時間外労働(残業)があった場合に過労死の危険性が高まり、業務と発症との関連性が強いとしています。過労死ラインは目安でこれ以下の時間の残業でも労災認定された事例が多数あります。

安倍政権は更なる抜け道を用意しているのです。大変分かりにくいのですが、①月45時間、年間360時間の上限規制は休日労働は含まれないのに対して、②平均80時間、単月100時間未満の上限規制は休日労働を含めて計算されるのです。悪質な経営者が悪用すると、一例として1月から5月まで月80時間の残業、6月には50時間の残業+30時間の休日労働、7月から12月までは月45時間の残業+月35時間の休日労働を命じることが合法になります。この場合、年間で残業は720時間、休日労働は240時間、併せて960時間の時間外労働になります。月平均では80時間となります。安倍政権による時間外労働の上限規制は過労死を防止するものではなく、過労死を促進させるものです。

しかも、労働政策審議会でも課題とされている勤務と勤務のあいだの時間つまり休息時間「勤務間インターバル規制」は具体的な制度設計がなされないまま、経営者のさじ加減でどうにでもなる努力目標とされています。EUでは、原則として「24時間につき連続して11時間の休息期間を設けること」が義務付けられています。EUと比較して確かな資料はありませんが日本の通勤時間の長いこと、通勤事情が過酷なことは間違いないでしょう。

労働時間の上限規制は労使協定を締結することによって例外を認めていますが長時間労働抑制の歯止めになるのでしょうか。時間外労働については36協定の締結が義務付けられていますがその実態は多くの企業で歯止めになっていないことは明らかです。時間はこの問題に関する労働界の動きについて述べます。(続く)