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安倍政権によって目論まれている「働き方改革」、実態は「企業活躍」を優先する「働かせ方改革」の内実は9月8日厚生労働省が、労働政策審議会に答申した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」でその内容が明らかになった。

  1. 年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発などの一部専門職を労働時間規制から外す。残業代、深夜休日の割増賃金は支払わないという、高度プロフェショナル制度創設は、実態としては残業代ゼロ法案です。これは本来、長時間労働防止の機能を持つ労働基準法の解体に繋がるものです。残業代ゼロ法案は年収基準を歯止めにしているように見えますが、「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」では、「年収1,075万円以上」とされていますが、以前に示された「法律案の概要」では一定の年収(少なくとも1,000万円以上)と曖昧な表現となっています。「法律案の概要」が曖昧な理由は改正される労働基準法では「年収1,075万円以上」は明記されず省令によって決定されるという常套手段を温存するためです。経団連は2005年にほぼ同じ内容の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を提案した際、年収要件を「400万円以上」としていました。年収要件は法案が成立すればことあるごとに引き下げられるでしょう。又、「法律案要綱」では基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること、としています。
  2. 裁量労働制の適用対象が大幅に拡大される。裁量労働制は「見做し労働時間」に基づく定額賃金が払われる=労働時間規制の適用除外制度であり専門業務型と企画裁量業務型の二つが法定化されています。企画裁量業務型裁量労働は現行法では「事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務であって、性質上その遂行方法を大幅に労働者委ねる必要があるため、その業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に限られています。(労働基準法第38条の4第1項)「法律案要綱」では、「事業の運営に関する事項について繰り返し企画・立案・調査及び分析を行うとともに、これらの成果を活用して、当該事業の運営に関する事項の実施状況の把握及び評価を行う業務」と「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析を行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客に提案する業務」を追加するとなっています。いずれも抽象的で幅広い解釈が出来るものとなっています。裁量労働制では現行でも対象の曖昧さが問題となってきましたが、対象が不明確なまま該当する労働者が大幅に拡大することになります。対象業務が不明確であるならば、団体交渉は平行線をたどり、裁判で解決することが不可欠となってきます。
  3. 残業時間の上限規制について「法律案要綱」は、①労働時間を延長して労働させることの出来る限度時間は1カ月について45時間及び1年について360時間とすること②年間の労働時間の上限を720時間として、その枠内で「1カ月100時間未満」「2~6カ月の月平均80時間以内」の残業を特例で認めるという制度です。分かりにくのは月45時間、年360時間の上限規制は休日労働が含まれないのに対して、月平均80時間、例外として単月100時間未満の上限規制は休日労働を含めて計算されることです。悪質な経営者がこれを悪用すると、一例として1月から5月まで月80時間の残業、6月には50時間の残業+30時間の休日労働、7月から12月までは月45時間の残業+月35時間の休日労働を命じることが合法になります。この場合、年間で残業は720時間、休日労働は240時間、併せて960時間の時間外労働になります。月平均では80時間となります。安倍政権による時間外労働の上限残業代ゼロ法案や裁量労働制は残業時間の抑制を図るものではありません。一方罰則付きの残業時間の上限規制は残業時間の抑制を図ることを目指す筈です。
  4. おかしくありませんか。安倍政権は労働基準法の改悪の他労働契約法改正による「同一労働同一賃金」等を含めて一括法案として審議採決することを目論んでいます。次回は、更に範囲を広げて「法律案要綱」を精査しましょう。(続く)規制は過労死を防止するものではなく、過労死を促進させるものです。これはブログ(11)に記載しています。