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これまで裁量労働制の適用範囲の拡大の問題点の指摘を中心に述べて来ました。安倍政権は裁量労働制の拡大だけではなく高度プロフェショナル制度の創設も目論み、安全保障関連法案強行採決の再現を狙い、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金という耳触りの良い法案を抱き合わせて、一本化して審議・強行採決を企てています。火事場泥棒解散によって第194臨時国会では働き方改革関連法案は棚上げされましたが、前原の暴走と小池の目論み違いで与党が多数を占める可能性が生まれました。次の国会で、働き方改革法案が審議されることになるでしょう。

法律案要綱を精査しましょう。

第一 労働基準法の一部改正

1 時間外労働の上限規制

(1)法案要綱を注意深く見てみると法案要綱が「労働時間を延長し、又は休日に労働させることが出来る」という表現で、8時間を超える勤務と、休日の労働を区別していることに気付く筈です。

(2)「労働時間を延長して労働させることができる時間は」「限度時間は1カ月について45時間及び1年について360時間とすること。」1カ月45時間という上限は8時間を超える労働に限定されています。つまり、使用者は1カ月45時間の残業の他に休日労働を命じることが出来るのです。

(3)36協定の締結にあたり特別条項に関する労使合意(労働組合のない場合は民主的方法で選出された労働者代表)がある場合には、100時間未満の範囲であれば臨時的に1カ月45時間を超えて労働時間を延長して及び休日労働させることが出来るのです。

(4)法律案要綱では、1カ月100時間未満の上限規制は「当該事業場における通常予見できない」として、直前の1カ月、2か月、3か月、4か月、及び5カ月の期間を加えた平均の労働時間が80時間を超えないこととしています。法律案要綱はこれに違反する場合「所要の罰則を科すものとすること。」としています。

(5)法律案要綱は時間外労働の上限規制でこの二つを使い分けているのです。ブログ11で指摘した抜け道を再度記します。・・・・大変分かりにくいのですが、①月45時間、年間360時間の上限規制は、休日労働は含まれないのに対して、②平均80時間、単月100時間未満の上限規制は休日労働を含めて計算されるのです。悪質な経営者が悪用すると、一例として1月から5月まで月80時間の残業、6月には50時間の残業+30時間の休日労働、7月から12月までは月45時間の残業+月35時間の休日労働を命じることが合法になります。この場合、年間で残業は720時間、休日労働は240時間、併せて960時間の時間外労働になります。月平均では80時間となります。安倍政権による時間外労働の上限規制は過労死を防止するものではなく、過労死を促進させるものです。・・・・

(6)時間外労働の限度については、建設業従事者、自動車の運転業務従事者と医師については施行してから5年間は適用除外が続くのです。

2 中小企業の割増賃金の支払い義務の適用猶予の規定の廃止

労働基準法第37条は1カ月60時間を超える時間外勤務に割増率を50%(早朝深夜75%)としていますが、中小企業の割増賃金の支払い義務の適用猶予の規定の廃止によって平成34年4月1日からこの猶予が無くなります。

3 年次有給休暇

使用者には、年次有給休暇の日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇の付与後1年以内に5日の有給休暇付与が義務付けられるようになります。法理案要綱は、これに違反する場合「所要の罰則を科すものとすること。」としています。でも、そもそも有給休暇は労働者が自由に取得できるのですが、企業にとって都合の良い計画年休の促進策ともなりかねません。

4 フレックスタイム制

フレックスタイム制は、労働基準法第32条第3項で定められています。出勤時間が自由だから残業代の支払いの必要がないと誤解されている場合がありますが、これは誤りです。フレックスタイム制では、1カ月の総労働時間が平均して週40時間を超える場合は、残業代の支払いが必要です。分かりにくいのですが、1カ月の日数が31日の場合は177.1時間、30日の場合は171.4時間、29日の場合は165.7時間、28日の場合は、160.0時間を超えた労働時間が残業代の対象となります。早朝・深夜勤務の割増賃金の支払いも必要ですし、法定休日の勤務に対する割増も必要です。現行では、1カ月単位で清算することが求められています。法律案要綱はいままで1カ月であった清算期間の上限を3カ月とするとしています。法律案要綱は1カ月を超える清算期間を定める労使協定については、行政官庁への届け出を義務付けて、これに違反する場合、「所要の罰則を科すものとすること。」としています。ますます分かりにくくなります。又、起算日が1日ではないことも分かりにくい原因です。

又、法律案要綱は、清算期間が1カ月を超える場合においては1カ月ごとに1週間当たり50時間を超えて労働させた場合においてはその超えた時間について法定割増賃金に係る規定の例により割増賃金を支払が必要としていますが、これも分かりにくくなる原因であり、残業代不払いを助長することは明らかでしょう。

5 法律案要綱が労働基準法の一部改正に際して場則規定を設けているのは3点だけです。この内、年次有給休暇10日以上の労働者に対して年次有給休暇の付与後1年以内に5日の有給休暇の付与は、そもそも年次有給休暇取得という労働者にとって当たり前の権利が行使し難い現状を少しだけ改善する者にしか過ぎません。又、1カ月以上の清算期間のフレックスタイムの労使協定を行政官庁に届け出ることが使用者にとって不利益とは言えません。とどのつまりは、法律案要綱は1カ月100時間以上の時間外労働を命じた使用者に罰則を設けたに過ぎません。

6 企画業務型裁量労働制 このブログの締めくくりとして、後で詳しく記します。

7 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)後で詳しく記します。(続く)