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法律案要綱の精査を続けます。

第七 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部改正

第八 労働契約法の一部改正

法律案要綱は、労働契約法について「期間の定めがあることによる不合理な労働条   件の禁止に関する規定を削除すること」「その他所要の規定の整備を行うこと」とわずか2行の記載で済ましています。

これまで労働法規の中心は言うまでもなく、労働基準法でした。労働基準法は、憲法第27条「労働権」の規定に基づいて1947年に制定された労働者保護法で、8時間労働制等最低限守られるべき条件を示すものです。菅野和夫「労働法」は、「労働基準法は、労働者保護のために、労働に関する契約関係の強行的な原則や基準を多数法定し、かつ組織的統制の基本となる就業規則に関する規制を樹立した。そして、それらの法制が及ぶ適用範囲を画する『労働契約』という契約概念を設定した。労働基準法の適用範囲を画する『労働者』の定義(労基9条)と民法上の『雇用』の定義の類似性からすれば、労働基準法は民法の『雇用』に該当する労働関係を想定して上記のような規制を行うこととしたと考えられるが、民法の契約概念をそのまま用いずに、『労働契約』という基本概念を創設したのである。これは労働関係における契約当事者間の実質的不平等性と組織的支配の特色とを意識し、これらを反映した契約概念を定立しようとしたためであると考えられる。」

「平成19年(2007年)に「制定された『労働契約法』は、労働基準法も『労働契約』という言葉をそのまま用い、同法の労働関係の規制と連携しつつ、労働関係の特色に即して、契約関係の成立、展開、終了に関する労働法上原則(理念)と規範(ルール)を設定した。」と、労働基準法と労働契約法について述べています。

労働契約法は「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうと定義しています。(第2条)従って労働契約法は所謂「正社員」「有期雇用労働者」「無期あるいは有期のパートタイマー」の全ての労働契約を規定しています。そして労働基準法は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」(第3条)と均等待遇を規定しています。労働契約法第20条の期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止は、「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」と定めています。労働契約法第20条は、労働基準法第3条の規定を補強するものと考えられますが、反面「職務の内容」という概念が紛れ込んで均等待遇の意味合いを限定しています。

労働契約法が全ての労働者を対象とするものであり、労働基準法を補完するものですから、労働契約法から第20条を削除する意味は全くありません。第20条の削除は無期契約が原則であり、有期契約は例外であるとする労働基準法の立法趣旨に反するものです。

第七パート労働法の一部改正についての法律案要綱を検討しましょう。

1 題名を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に改める。

2 定義 「短時間労働者」「有期雇用労働者」「短時間・有期雇用労働者」

3 基本的理念 「短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者は、生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することが出来る機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとすること」でもっともな内容に見えますが法律案要綱は「その意欲及び能力に応じて」をさりげなく挿入しています。意欲及び能力を査定するのは使用者であり、理不尽な評価を覆すためには、団体交渉や訴訟等力の行使が必要です。

4 不合理な待遇の禁止 法律案要綱は労働契約法第20条の「労働者の労働契約の内容である労働条件」を「労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれ」と言い換えています。これは派遣労働者の不合理な待遇の禁止と同様です。

当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において業務の内容及び責任の程度(職務の内容)配置の変更の範囲その他の事情のうち、不合理と認められる相違を設けてはならない。「職務の内容」「配置の変更の範囲」につぃては「裁量労働制を考える」(22)に詳述してあります。(続く)