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特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)(1)

 

法律案要綱は、①賃金、労働時間その他の労働条件を調査審議し、事業主に意見を述べる使用者、労働者代表を構成者とする委員会を設置し、委員の五分の四以上の多数による議決でこの法律で定めた事項を決議する。②当該決議を行政官庁に届け出る。③この法律で定めた労働者の範囲に属する労働者(対象労働者)に限定して④かつ書面等によって、同意を得ることによって、労働基準法第4章(第32条~第41条)で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金の規定は対象労働者には適用しないものとしている。尚、この委員会に関する事項は、企画業務型裁量労働制の委員会に関する事項に準用するものとされています。

 

法律案要綱に示された委員会で決議しなければならない事項は以下の通りです。

 

1 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事して得た成果との関連性が通常高くないと厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせる業務

2 使用者との間の書面等での合意に基づき職務が明確に定められ、賃金の額が基準平均賃金額の3倍を相当上回る水準で、厚生労働省令で定める額(1,075万円)以上であること。

3 対象労働者の労働時間を把握する措置を使用者が講じること。

4 1年間に104日以上、かつ4週間で4日以上の休日を就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。

5 次のいずれかの措置を使用者が講ずること。①厚生労働省令で定める休息時間の確保、かつ1カ月の深夜業の回数を厚生労働省令で定める回数以内とすること、②健康管理時間(事業場内にいた時間及び事業場外で労働した時間)を厚生労働省令で定める時間を超えない範囲とすること、③1年に1回以上の継続した2週間、又は、労働者が請求した場合は、1年に2回以上の継続した1週間の休日を与えること、④健康管理時間が1週間40時間を超えた場合、その超えた時間が1カ月80時間を超えた場合又は本人から申し出があった場合(を想定することとするの注記があるが)厚生労働省令で定める健康診断の実施。いずれかはどれか一つでも良いですから、要件としては使用者側に甘いものと言えるでしょう。

6 有給休暇の付与、健康診断実施その他の厚生労働省令で定める措置の内、当該決議で定めるものを使用者が講ずること。

7 対象労働者の苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

8 使用者は2について同意しなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならないこと。

9 1~8の他厚生労働省令で定める事項

であり、使用者は4~6までの措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならないものとすること。

 

法律案要綱では、高度プロフェッショナル制度についての定めについて罰則規定はありません。使用者の講ずべき措置の内行政官庁に報告義務があるのは、実質的に休日と労働時間に関係するものだけです。しかも労働時間については週40時間を超えた場合、その超えた時間が1カ月80時間を超えた場合健康診断が義務付けられているに過ぎません。6については決議した内容の報告にしか過ぎません。又、厚生労働省令で定める事項が多いのも目立ちます。つまり、国会審議なしに厚生労働省が決定できる厚生労働省令で実質的な内容が決定されることになります。

法律案要綱は曖昧な内容のまま、労働時間規制の例外を作ろうとするものです。これまで労働時間規制の適用除外とされている管理監督者や見做し時間の適用を受ける裁量労働制は、いずれも労働者が労働時間を自律的に管理して業務遂行方法を自ら決定できることを要件としていますが、高度プロフェッショナル制度は、年収要件だけが定められているに過ぎません。しかも年収要件は国会での審議なしに厚生労働省令により決定されます。2005年の日本経団連の「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」では、対象労働者の年収は400万円と想定されていました。次回の「裁量労働制を考える」(26)で法律案要綱の問題点を掘り下げます。(続く)