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特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)(2)

 

高度プロフェッショナル制度の問題点を検討して行きましょう。

 

1  法律案要綱は、高度プロフェッショナル制度の対象業務について、「高度の専門的知識、技術、又は経験を要する」「業務に従事した時間と成果の関連性が強くない」としています。「今後の労働時間法制の在り方について(報告)」では、「具体的には、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度の考案又は助言の業務)、研究開発業務等」としています。

「高度」が頻繁に使用されていますが、「高度」か「一般的」かの線引きは曖昧です。まず、企業が判断することになりますからご都合主義が跋扈することが予測されます。金融ディーラーなどは高度プロフェッショナルであると考えられています。しかし、金融ディーラーが一人で全ての業務を行っていないのが通例です。アシスタントが業務を補助する形態が一般的です。イメージでいえば、主務者は高度プロフェッショナル、アシスタントは一般職でしょう。年収要件が1,075万円であれば、分かりやすい図柄です。しかし、年収要件が1,075万円で維持される保証はありません。

考えてみれば、専門的業務については既に専門業務型裁量労働制による見做し労働時間制度が存在するため、この制度を設ける必要性には疑問符が付きます。加えて、「業務に従事した時間と成果の関連性が強くない」は、既に多くの企業が成果型賃金制度を導入している現状から見て、新しい制度を作る必要性には疑問符が付きます。又、具体的業務は政令で定めることですから、法改正なしに(国会審議すら省いて)適用対象業務が拡大される危険性があります。

とりわけ大きな危険性が感じられるのが「コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度の考案又は助言の業務)」です。事業・業務の企画を外部のコンサルタントに依頼する企業は例外的です。多くの企業では「経営企画部」などがこの業務を行っています。年収要件が引き下げられれば、どうなるのでしょうか。

 

2  法律案要綱は、高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対しては、労働基準法第4章(第32条~第41条)で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金の規定は適用しないとしています。現行法で労働時間規制の適用外とされている管理・監督者でさえ、健康確保のため、深夜割増賃金の支払いは除外されていないが、法律案要綱では、深夜割増賃金さえも除外されています。我が国の労働時間制度として初めて深夜労働時間に関する規制も適用除外とされています。又、これは、2005年の日本経団連の「ホワイトカラーエグゼプションに関する提言」と符合するものです。

 

3 法律案要綱は、健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置として、「一定の時間以上の休憩時間を与える」「1カ月について深夜業は一定の回数以内とすること」としているが休憩の一定の時間、深夜業の一定の回数は、明らかにされていません。「健康管理時間が一定の時間を超えないこと」は、80時間とされ、超過したならば健康診断の実施が義務付けられているに過ぎません。「4週に4回の休日、年間104日以上の休日」についても1日当たりの労働時間の制限がないため、歯止めになる内容ではありません。しかも、これらのいずれかを実施すれば良いとしているのです。これらの全てを要件とすべきことは当然です。しかも罰則規定がありませんから、企業の良識に頼るばかりの健康・福祉確保措置に過ぎません。労働安全衛生法で1週間当たり40時間を超えた時間が1カ月当たり100時間を超えた場合、医師による面接指導を行わなければならないとしていますが、100時間の妥当性には疑問が残りますし、産業医による指導が実効性をともなうのかにも疑問が残ります。

 

4 法律案要綱は高度プロフェッショナル制度の導入にあたっては対象労働者の同意が必要としていますが、労働者が同意を拒否することは難しく、制度適用の歯止めにはならないと考えられます。採用時の労働条件に含める形や成果主義賃金制度の適用条件とされてしまえば労働者は同意せざるを得なくなるものと考えられます。(続く)