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企画業務型裁量労働制(1)現行の裁量労働制

 

裁量労働制とは、業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に携わる労働者について、労働時間の計算を実労働時間ではなく、みなし時間によって行うことを認める制度です。裁量労働制を導入するには、出退勤時間は指示しない、みなし時間(1日8時間や、1日10時間等)の規定、健康確保措置、苦情処理措置を定めた労使協定を締結する必要があります。つまり、過半数労働組合、又は、民主的な方法で選出された労働者代表によって労働者の考えが反映されているというのが建前になっています。しかし、裁量労働制を導入して労働時間を含めた業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる筈ですが、過大な業務を会社から命じられるためにみなし時間を大きく超える長時間過重労働が繰り返される実態が大きな問題となっています。

 

現行の裁量労働制には、厚生労働省令、又は、厚生労働大臣令によって定められた19の専門的な業務に限り労使協定によるみなし時間制を実施する「専門型裁量労働制」と、経営の中枢部門で企画・立案・調査・分析の業務を行う「企画業務型」の2種類があります。「企画業務型裁量労働制」が実施できるのは、これまで、①本社、本店である事業場、②当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場、③本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場に限定されています。

 

企画業務型裁量労働制の導入に当たっては、労使委員会による5分の4以上の多数決による議決を必要とする、対象となる労働者の個別の同意を得る(就業規則による包括的な同意では駄目)など、「専門型裁量労働制」に比べて要件は厳格なものになっています。

 

*「専門型裁量労働制」は、①業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要があるため、②業務遂行の手段及び時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものです。(労働基準法第38条の3第1項)具体的な対象業務は、研究開発、情報処理システムの分析・設計、取材・編集、デザイナー、プロデュサー、ディレクター、コピーライター、公認会計士、弁護士、不動産鑑定士、弁理士、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウェア開発、証券アナリスト、金融工学による金融商品の開発、建築士、税理士、中小企業診断士、大学における教授研究に限られています。

 

*「企画業務型裁量労働制」は、企業の中枢部門で企画立案などの業務を自律的に行っている労働者について、みなし制による労働時間の計算を認めるものです。労使委員会が5分の4以上の多数決による決議を行い、使用者が行政官庁に届け出た場合、事業の運営に関する企画・立案・調査分析の業務であって、性質上その遂行方法を大幅に労働者に委ねる必要があるため、その業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に、その業務を適切に遂行するための知識・経験(すくなくとも3年ないし5年程度の)等を持つ労働者を就かせた時は決議されたみなし時間だけ労働したとして計算することが認められる制度です。(労働基準法第38条の4第1項)

 

労働政策審議会労働条件分科会で提出された資料によれば、企画業務型裁量労働制の平均みなし労働時間を8時間以下に設定する事業所が5割以上であるのに対して、平均実労働時間が、8時間以上12時間以下である事業所が71.9%であり、最長実労働時間が12時間を超える労働者が存在する事業所が45.2%も存在しているのが実態で、現行でも裁量労働制は長時間労働の温床となっています。

 

働き方改革における裁量労働制は「企画業務型裁量労働制」の範囲を拡大して、より多数の労働者にみなし時間制を適用して、低コストの長時間労働を可能にするもので、経営者がより有効に労働者を酷使できる仕組みなのです。(続く)