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企画業務型裁量労働制(2)働き方改革は何を狙っているのか

 

法律案要綱は、企画型裁量労働制の対象業務の拡大によって、労働時間規制の適用外の労働者拡大を目論んでいる。企画型裁量労働制は、高度プロフェッショナル制度に比してより大幅な影響を与えるものになるでしょう。裁量労働制は、年収要件がないからです。

 

法律案要綱は現行の企画型裁量労働制に二つの業務を追加すること、としています。

 

1 事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該事業の運営状況の把握及び評価を行う業務。

2 法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務。

 

法律案要綱が提示する拡大する企画型裁量労働制の類型1は、現行の企画型裁量労働制の「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に「これらの成果を活用し、当該事業の運営状況の把握及び評価を行う業務」を付け加えています。これは、企業の中枢における「企画、立案、調査及び分析の業務」そのものから離れ、その「実施」に関する業務に適用範囲を広げるものです。「当該事業の運営状況の把握及び評価」は極めて曖昧な定義であり、現場で業務管理を行う労働者に広く対象範囲が拡大される可能性が強いのです。当然のことに、何が「当該事業の運営状況の把握及び評価」であるのかを一次的に決定するのは経営者なのです。これに異議申し立てをするためには、力を持ち、闘う意思を持つ労働組合を組織する以外には、司法の判断を仰ぐしか方法がないように思えます。

でも、自分が今行っている業務が「当該事業の運営状況の把握及び評価」であると感じる人は多いのではないでしょうか。厚生労働省の説明によれば、「当該事業の運営状況の把握及び評価」とは、「裁量的にPDCAを回す業務」ですが、PDCAは、もともと事業活動における生産管理や品質監理などの管理業務を円滑に進めるための古くからの手法のひとつであり、「計画(Plan)・実行(Do)評価(Check)・改善(Act)」のことであり、所謂中間管理職だけではなく、係長や班長、チームリーダーなどき極めて広範な労働者が適用対象となる可能性が強いのです。

 

類型2の「法人提案型営業」は、これまで対象業務外とされて来た「個別の営業業務」を裁量労働制の対象とするものです。営業職があたりまえのように行って来た、顧客のニーズに応じて商品やサービスをカスタマイズして提案する場合は、全て「法人提案型営業」とされ、裁量労働制の対象となる危険性があります。

法律案要綱では、「主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く」ことが明記され、加えて「法人である顧客の事業の運営に関する事項を改善するために行う営業業務」であること、「既製品やその汎用的な組み合わせの営業は対象業務になり得ないこと、及び商品又は役務の営業活動に重点がある業務は該当しないこと」として、営業店舗などで、商品を販売する業務が裁量労働ではないとされています。

しかし、法律案要綱はこれらの規定を「指針」として定めるとしており、法律の規定としていないという抜け道を用意しています。このため、対象業務を限定する効果があるのか疑問が残ります。

 

そもそも裁量労働制は実際の労働時間の長短にかかわらず、一定の労働時間を働いたとみなす制度であり、力を持ち、闘う意思を持つ労働組合が存在しない場合、経営者が意図的にみなし時間を短いものとして定め、残業代減少のために裁量労働制を悪用する可能性は高いのです。労働時間管理は形骸化され、長時間労働が強要される危険性が高いのです。

現在の裁量労働制では、企画業務型裁量労働制の対象業務は、企業の中枢業務に限定されているのですが、実際には、企画型裁量労働制の要件を備えていないにもかかわらず、裁量労働制を適用している事例も数多く存在していると言われています。又、みなし労働時間よりも実労働時間がはるかに長い事業所が数多く存在しています。

現状でも多くの問題が指摘されているにもかかわらず、有効な対策を講じることなく、企画型裁量労働制の適用範囲を拡大することは、「世界一働かせやすい国・世界一働きにくい国」を目指すものであり、「働き方改革」がまやかしであることを明確に示しています。高度プロフェッショナル制度が、「働き方改革」の本当の狙いを実現するのに、時間が必要であるのに対して、企画業務型裁量労働制の適用範囲の拡大によって「1日8時間・1週40時間」の労働時間規制の対象外となる労働者が急激に増加する可能性があります。企画業務型裁量労働制の適用範囲の拡大は「働き方改革」の一丁目一番地なのではないでしょうか。(続く)