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企画業務型裁量労働制(3)法律案要綱の飴は甘いのか

 

1 法律案要綱は、対象業務に従事する労働者は厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有する者に限るとしています。そして基準として「少なくても3年間の勤続を必要とすること等を定める。」としている。しかし、この基準は法律ではないので実効性があるのか疑問が残ります。又、常識的に考えて、3年の勤続で、「事業の運営に関する事項の実施状況の把握及び評価」を行うことが出来るのでしょうか。「法人である顧客の事業の運営に関する事項を改善するために行う営業業務」に習熟することが出来るのでしょうか。美辞麗句の裏に「3年の勤続でも裁量労働制の対象労働者と見做して対象労働者の拡大を図る」本音が透けて見えます。

 

2 法律案要綱は、健康及び福祉を確保するために、①インターバル休息措置、②労働時間の上限措置、③年次有給休暇以外の有給休暇の付与、④健康診断の実施、が経営者に求められるが、いずれか一つの選択をすればよいという不十分なものでしかありません。やっぱり飴は甘くないのです。とりわけ、インターバル休息措置については、「当該労働者に対する終業から始業までの時間の確保」という不明確な規定となっています。又、労働時間の上限措置、健康診断の実施についてもこれまで明らかにして来たように実効性ない歯止めでしかありません。

 

3 法律案要綱は、「企画業務型裁量労働制において、使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化すること」としています。3年勤続の労働者が始業時間、終業時間を勝手に決める、絵空事に過ぎません。

 

4 働き方改革を審議してきた労働政策審議会の「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」は、「所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったことは、制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要である」旨を規定することが適当である、としています。2017年9月4日の労働政策審議会労働条件分科会で、厚生労働省の藤枝労働条件政策課長は「留意することが必要であるということも指針に明記することを建議いただいております。これはしっかりと対応したいと考えております。」と答弁しています。

しかし、法律案要綱には、建議された指針については触れられていません。そもそも、所定労働時間働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えて長時間労働を強要したならば、制度の趣旨を没却するものであり、罰則を科すことが当然の措置です。建議そのものが「相応の処遇の担保策を講じない」としていますが、「相応の処遇」が何を意味するのか不明なままです。素直に読めば長時間労働を強要された労働者に何らかの見返りを、と読むことが出来ます。「相応の処遇を担保すれば」みなし時間を大きく超える長時間労働を課してよいというものではないし、強制力や罰則のない指針では実効性を欠くのです。労働者が自らの裁量で労働時間を自律的に管理することが困難なほど、経営者による業務命令や指揮監督が行われた場合には裁量労働制の適用外となるという規定を法律に明記し、実労働時間に基づいて残業代を支払わせるように指導を強化する必要があるのです。

にもかかわらず、法律案要綱では指針について何の言及もしていません。ここでも働き方改革がまやかしであることが明白になっています。(続く)