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厚生労働大臣は2017年9月8日付で、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(法律案要綱)を労働政策審議会に送り審議会の意見を求めた。労働政策審議会は同年9月15日に、「概ね妥当と認める」と、答申した。労働政策審議会の労働条件分科会の報告では、当分科会の所管関係については概ね妥当と認めるとしているが、労働者代表委員から企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大と高度プロフェッショナル制度に対する反対意見が付された。

「法案要綱全体については、過労死・過労自殺ゼロの実現はもとより長時間労働の是正に向けた罰則付き時間外労働の上限規制の導入という労働基準法70年の歴史の中での大改革をはじめ、中小企業が適用猶予された月60時間超に対する時間外労働の割増賃金率の引上げ、年次有給休暇について年間5日の時季指定義務を使用者に課すこと等、評価すべき内容が多く盛り込まれている一方、要綱第一の五の企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大及び要綱第一の六の特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設については、当分科会で指摘した懸念点について、労働者の健康確保の重要性に関する公労使三者の共通認識の下、対象業務の範囲の明確化、健康確保措置の強化といった修正がなされたが、長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきでないとの考え方に変わりはない。」

 

1 一括法案の問題点

法律案要綱は、時間外労働の上限規制、裁量労働制の対象業務の拡大、高度プロフェッショナル制度、同一労働同一賃金等、労働条件に大きな変化をもたらすもので、各々、慎重に審議すべき法案を一つの法律案に一本化し、労働基準法、じん肺法、雇用対策法、労働安全衛生法、労働者派遣法、労働時間等改善法、パート労働法、労働契約法という8本にわたる法改正を一括して法律案としたことです。

裁量労働制の対象業務の拡大、高度プロフェッショナル制度という「働き方改革」の「鞭」と、労働時間の上限規制、同一労働同一賃金という一見、「働き方改革」の「飴」に見える部分を一括して審議しようとするものです。一括法案方式は安全保障関連法案で用いられた手口で、短時間の審議で強行採決を狙うものです。

「働き方改革」をめぐる報道では、労働時間の上限規制や同一労働同一賃金は評価すべきものとされ、上限規制の抜け道や、同一労働同一賃金が字義どおりではなく、極めて限定されていて「甘く」ないことについての議論は殆どされていません。

もう一つの問題は、労働契約法の一部改正にあります。労働契約法は、所謂「正社員」「有期雇用労働者」「無期あるいは有期のパートタイマー」「派遣労働者」の全ての労働契約を規定しています。法律案要綱は労働契約法第20条の「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止に関する規定を削除すること」としています。何故、労働契約法から差別的取扱に対する禁止の規定を削除する必要性があるのかは説明されていません。差別的取扱の禁止に係る法律が、有期雇用労働者と派遣労働者で違うものなのでしょうか。労働契約法第20条の削除には問題があります。

 

2 労働条件分科会の労働者委員の意見は、極めて不十分なものです。

 

意見は罰則付き上限規制を過大に評価しています。「労働基準法70年の歴史の中での大改革」そんなことはありません。連合神津会長への媚へつらいとしか言いようがありません。罰則は、健康上有害とされる業務についてさえ、1日2時間以上の残業、その他の業務については1月100時間以上の残業、2~6カ月の平均80時間以上の残業、をさせた場合だけです。

又、同一労働同一賃金も極めて限定された部分で差別的取り扱いが禁止されるに過ぎません。

何よりも企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大及び高度プロフェッショナル制度については、健康確保措置が強化されるならば労働時間法制の適用対象外となる労働者が増えても、換言すれば、1日8時間、1週40時間という労働時間の国際基準からの逸脱が容認されるかのようです。

 

結論:安倍政権が目論む「働き方改革」はまやかしであり、「世界一労働者を働かせやすい国」「世界一労働者が働きにくい国」がもうそこまで来ているのです。法案の施行期日は2019年4月1日となっています。2018年の国会で審議が行われることになりますが、安全保障関連法案同様、強行採決が懸念されます。高度プロフェッショナル制度の本当の狙いが実現するには何年かの時間が必要でしょう。やはり、企画型裁量労働制の対象業務の拡大が「働き方改革」の一丁目一番地なのです。法案が強行採決で可決されたら、力を持ち、闘う意思のある労働組合を組織しなければなりません。しかし、現在の企業内組合の多くは闘う意思が弱いように思えます。

では、どうするのか。自分一人で考えるのには、無理があります。でも企業内での話し合いが困難なケースも予想されます。誰でも一人でも加入できる労働組合の助言を求めるのも一つの方法です。組合に加入すれば、同じような悩みを持つ人との交流も期待できます。共に解決への道筋を考えましょう。(裁量労働制を考える・・・完・・・)